自然派ライフ住宅設計では、様々な耐震補強を施してきましたが、中にはこれまで良く大丈夫だったなというほどの、耐震補強が全くされていない住宅もありました。
今でも、日本の木造一戸建て住宅の約4割は耐震不足と言われています。
近年のマグニチュード6以上の約2割は日本で発生しているということもあり、日本で暮らすいじょうは住まいの耐震補強といった地震対策は必須になっています。
地震対策には、大きく分けて3つの工法があります。
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耐震
一つは一般的な耐震補強で、これは地震に耐えるために建物をより頑丈に固めて、地震に対して立ち向かい揺れに耐えるという工法です。
免震
二つ目は免震という工法で、ビルやマンションなどで多く施されているもので、基礎と土台の間にエネルギー絶縁装置を設置して、地震エネルギーを構造躯体に伝えないようにする工法です。
これは耐震の欠点を補う画期的な考え方で、耐震の堅め利ことにより地震の揺れが増幅するという欠点を補う工法です。
耐震の場合、倒壊はしなかったけれど、実は内部はガタガタになっていて、次の地震がきたときには耐える力が残っていないというケースを解消する工法になりました。
つまり揺れにくさという視点と損傷の軽減という意味では、耐震の欠点を補うものになりました。
最近では、新築住宅や新築マンションに取り入れている会社もありますが、既存住宅の補強で免振装置を設置するには高すぎるという問題があります。
制震
三つ目は制震という地震にブレーキをかける工法です。
地震による建物の揺れをエネルギーとしてとらえ、制振装置でそのエネルギーを吸収する工法です。
ブレーキと同じ発想で、地震で揺れる建物にブレーキをかけることにより、建物の揺れや構造躯体の損傷を軽減するというものです。
これら3つの工法がありますが、効果としては地震のエネルギーを建物と絶縁してしまう免震が最も有効であるといえます。
しかし、既存の住宅に免振対策をほどこすには、住まいを持ち上げ、免振装置を設置するなどの大々的な工事が必要となり、費用も高額になるという問題があります。
自然派ライフ住宅設計では、免震と比較して、経済的で設置への制約が少ない耐震+制震工法がコストパフォーマンス的にすぐれていると考えて、木造軸組住宅のリノベーションには、筋交い+耐震面材+制震ダンパーの合わせ技を採用しています。
耐震補強の考え方
今まで耐震補強の必要性が叫ばれており、必要なことです。
耐震診断では、構造評点1.0未満の建物は倒壊の恐れがあると言われて、耐震補強工事を勧められます。
熊本地震では、耐震等級2の建物も倒壊しましたので、構造評点は1.25以上必要だと考えられます。
これは「いまの住宅に必要な耐力」に対する「今の住宅が保有している耐力」の割合です。
つまり、不足している「必要な耐力分」の耐震補強が必要になるということで、それを補う「制震」という発想が生まれたのです。
現在保有している耐力に補強をして、必要な耐力まで引き上げる耐震だけではなく、「現在保有している耐力」自体を制震する、つまり地震エネルギーを減衰させることで、引き下げることが可能になるという発想です。
制震ダンパー設置の注意点
制震ダンパー設置には注意が必要です。
制震ダンパー設置の補強計画をする場合は、あくまでも耐震補強で構造体の強度をある程度高めておく必要があります。
ここで重要なのが、構造評点はあくまで1.5を目指し、その上で減衰の力を利用して、地震の初期状態から建物の損傷を抑え、元々の耐震構造を長持ちさせるという考え方です。
ですので、一番やってはいけないことは、制震ダンパーを設置するだけで、ギリギリ評点1.0にするということです。
そもそも、ほとんどの制振装置が耐力壁に設置するタイプですので、耐力壁が破壊されてしまうと制震の効果が亡くなってしまうからです。
「壁倍率」の高い制震ダンパーなどで耐震補強計画をたててしまうと、耐震補強目的で制震ダンパーを配置することになり、制震の本来のもくてきである減衰効果が、地震の後半で効くことになるので、損傷防止でなく倒壊防止の対策となってしまい、本末転倒ということです。
制震ダンパーの種類
制震工法は、ここ数年で認知が進んで、いろいろなメーカーからいろいろな商品や装置が出ていますが、どのような効果があるのでしょうか。
制震商品は主に壁内に設置しますが、壁面全体に設置するタイプ、筋交いタイプ、仕口タイプ、方丈タイプなど様々な種類があります。
制震ダンパーには、車のブレーキと同じ原理のゴムで地震エネルギーをブレーキするタイプや、車のショックアブソーバーと同じ原理のオイルで地震エネルギーを吸収するタイプのものなど、いろいろあります。
ただ、この制振ダンパーの施工基準が、建築基準法や耐震改修で明確なルールが定められていないという問題があります。
そのため、制震ダンパーを設置するにあたって、各商品の性能を工務店や施主が判断しなければならないということになります。
「制震」はそもそも地震エネルギーを吸収して建物の変形を抑えるという考えに基づいており、ということは変形してからではなく、変形させないために設置するということがポイントなのです。
制震ダンパーの目的 倒壊防止?損傷防止?
まず、耐震の目的は「震度6強~7程度の大きな地震でも倒壊せず、中にいる人が安全に非難する時間を確保すること」で人命優先ですが、建物の損傷は考慮していないことと、繰り返し起きる揺れに「何度も耐える」ことは考慮されていない点が耐震の考え方の弱点でした。
耐震等級が高い住宅でも、熊本地震のように連続して起きる地震によって「損傷」はしてしまうのです。
耐震工法で耐力を向上すると、同時に加速度(衝撃)も大きくなることは見過ごされがちです。
衝撃が大きくなることは、建物の弱い箇所に応力集中を招き、強くなっている筈の建物が壊れるメカニズムはそこに在ります。
それとこれまでは危険性を重視していなかった地震波と建物の揺れによる、共振現象による物です。
共振現象とは建物の固有周期(建物それぞれの硬さ、柔らかさ)と地震波(揺れる速さ)のタイミングが偶然一致し、予期されない力が建物へ加わる事をいいます。音で言う共鳴のような現象です。
次に地震の周期は揺れの速度が速いタイプと遅いタイプに別れます。
図のように、効果を発揮する段階が大きく分けて2パターンあり、制震ダンパーがどの段階で作用するかの違いがあることがわかります。
木造住宅の良さは「しなやかに揺れながら耐える」「柳のように力を受け流すから壊れにくい」と言われてきました。
具体的には、木造住宅を守っている構造用合板は、1/120rad(0.47度)、筋交いは、1/90rad(0・6度)という、僅かな変形から傷み始めます。
ここまでの変形であれば建物はまたもとの形に戻ります。(弾性変形)
これ以上変形が進むと木造住宅は元に戻ろうとしますが、残留変形が残ってしまいます。(塑性変形)
制震ダンパーには、安心領域段階で効き始める商品と損傷領域に入り始めて機能を発揮する商品にわかれています。
地震の振動
1回の揺れが3~20秒以上の物を長周期地震動と言います。
一般住宅にとって最も危険な周期が1~1.5秒で、専門家は「暗黒の周期」あるいは「キラーパルス」と表現します。
実際に阪神淡路大震災では全壊 104,906 棟、半壊 144,274 棟、全半壊合計 249,180 棟の被害が出ました。
実際の地震の周期は0.8秒程度で、軟弱地盤により揺れがゆるやかになり、1秒を超え
る危険な周期になったと検証されています。
また、2011年の東日本大震災は0.3秒と言う非常に周期の短い地震でした。
津波の被害により実態は把握出来ない状況ですが、震度7の地震であってもそれほど住宅へ直接的な被害は出ていないのです。
震源地から少し離れた茨城、栃木などでは周期が長くなり建物が倒壊する被害が出ています。
短い周期ほど硬くて高さの低い物へ影響を受けます。例えば墓石や灯ろうなどが代表的です。
これらの現象は全て共振現象による被害です。揺れているブランコをタイミング良く後ろから押してあげると大きく揺れ続けます。これが共振現象です。
制震ダンパーは、この共振現象からくる「建物の損傷」を防止するためにも有効なのです。
壁倍率がある制震ダンパーと壁倍率がない制震ダンパーの違い
制震ダンパーには壁倍率がある商品と壁倍率がない商品がありますが、壁倍率が高い方が良さそうな気がしますが注意が必要です。
前述したとおり、耐震と制震はまったく違う概念であり、耐震は十分に満たした上で、なおかつその耐震性能を制震で守るという考えが正しい考えとなりますので、制震ダンパーには壁倍率という発想はそもそもいらないと言えます。
上の図を見ていただくとわかりますが、壁倍率がある制震ダンパーは、耐力壁としても機能しますので、安心領域段階では耐力壁として機能します。
建物の耐震性能があるうちは地震による変形が少ないため、制震ダンパーはこの段階では機能せず耐力壁としてずっと地震に耐えている状態です。
しかし、繰り返し地震により建物の耐震性能が機能しなくなった段階、変形量が多くなった段階になって壁倍率のある制震ダンパーは制振機能を発揮しはじめます。
つまり、建物が損傷した後の倒壊を防ぐのが目的となります。
突き詰めると、命を守ってはくれるが建物はすでに損傷し始めている段階で効果を発揮する特性がありますので住めなくなる可能性が高いということになります。
変形30㎜以上で効果を発揮するようなタイプは危険と判断します。
一方、壁倍率がない、もしくはあまり強調していない制震ダンパーはどうでしょうか。
初期の安心領域段階から制振装置として機能します。図に記載されているバイリニア特性とは、 制振装置が地震のエネルギーを吸収する「減衰力」の増大に伴って、 躯体を傷めることがないように考えた特性のことです。
このバイリニア特性によって、建物の構造部材が地震によって損傷する前に、建物にかかる衝撃力を和らげ、建物を守ることができ、初期に効果を発揮することから、損傷防止として機能することがわかります。
つまり住み続けることが可能性が高まります。
熊本地震では、繰り返しの地震で多くの建物が被害を受けました。繰り返しの地震の中で建物は変形し、弾性域から塑性域へ移行し、やがて倒壊します。
地震初期の弾性域で効果を発揮するのが、壁倍率のない、もしくは強調していない制震ダンパーとなります。
まとめ
このような商品の違いを考えた際に、前半でお伝えさせていただいた、耐震性能と制震性能について、制震ダンパーを耐震性能ギリギリで計画する際には、壁倍率が必要になるのかもしれませんが、そもそも、耐震と制震は目的が違います。
これらを理解するとどのような制震ダンパーを設置すべきかは見えてくるのではないでしょうか。
自然派ライフ住宅設計㈱のリノベーションとは
自然派ライフ住宅設計㈱のお家造りは、新潟市で自然素材を使用した性能向上リノベーションです。今あるお家を健康で快適な住継げるお家にすることです。
つまり、お家を温かく涼しくしながらも、間取りを変え、素材を一新し、耐震性能を向上させる。ことができます。
お客様のお家を性能向上させてより住みやすく快適に、尚且つ大事なご家族の皆様が住み続けられるように変動した家族構成に対応するお家造りを行っています。
そうしてお家の歴史を繋いでいくことが、親から子世帯への繋がりを結び続ける事だと考えています。
新潟市内のお客様から県外からのお客様まで幅広い年代の方にご相談頂いています。
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▼性能向上リノベ デザインアワード2022 特別賞受賞
▼株式会社建築知識様(エクスナレッジ様)の新建ハウジングにも20~30回以上掲載頂いています。
▼中立な立場で住宅診断を行うホームインスペクターである有名な市村崇様の著書にも新潟県で唯一選考頂きました。