地震大国といわれる日本では、毎日のようにどこかで地震が発生しています。
南海トラフ地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震、首都直下地震、中部圏・近畿圏直下など、震度7以上の大地震が今後30年以内に発生する確率は70~80%であると予測されています。
そこで、大地震が発生した場合でも、家族の命や、財産である家を守るための耐震性についてお話しします。
国土交通省でも住宅・建築物の耐震化について以下のように発表しています。
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住宅・建築物の耐震化について―国土交通省HPより
1 住宅・建築物の所有者の方へ
- わが国では、これまでも、平成7年の阪神・淡路大震災、平成16年の新潟県中越地震、平成23年の東日本大震災、平成28年の熊本地震などの大地震が発生しています。また、南海トラフ地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震、首都直下地震、中部圏・近畿圏直下地震などの大規模地震は、近い将来の発生の切迫性が指摘されています。
- このような大地震から自らの生命・財産等を守るためには、住宅や建築物の耐震化を図ることが必要であり、住宅や建築物の所有者一人ひとりが、自らの問題として意識して取り組んでいただくことが重要です。
- 国土交通省では、「令和12年までに耐震性が不十分な住宅、令和7年までに耐震性が不十分な耐震診断義務付け対象建築物をおおむね解消する」ことを目標として掲げ、所有者による耐震化を支援しています。
住宅・建築物の耐震化の現状と目標
(1) 昭和56年以前に建築された建物の耐震診断・耐震改修をしましょう。
- 昭和56年以前に建築された建物は、建築基準法に定める耐震基準が強化される前の、いわゆる「旧耐震基準」によって建築され、耐震性が不十分なものが多く存在します。
- そのため、まずは、耐震診断を実施し、自らの建物の耐震性を把握しましょう。そして、耐震診断の結果、耐震性が不十分であった場合は、耐震改修や建替えを検討しましょう。
- 耐震診断や耐震改修には費用がかかりますが、国と地方公共団体では、協力して様々な支援制度を講じています。耐震改修等にあたっては、是非支援制度をご活用ください。
- 一方、近年、悪質なリフォーム工事詐欺による被害も問題となっており、「『国土交通省の依頼を受けて耐震診断を行っている。』、『住宅の耐震改修が耐震改修促進法によって義務付けられている。』等と言われたが、どうすればよいのか?」といったお問い合わせが寄せられています。国土交通省では、直接、個別の住宅・建築物に対する耐震診断や耐震改修を行っていません。地方公共団体の窓口に相談するなどし、十分にお気をつけください。
・・・とあります。
まず、家の耐震性とは何なのかということからです。
住宅の耐震性能の指標には、「耐震基準」と「耐震等級」があります。
大地震時の構造躯体の強度を示す「耐震等級」は、家を建てる際に、必要不可欠な評価基準と言えます。
言い換えれば「耐震等級」をより深く理解することが、家族の命と財産を守るための家づくりに重要であるということです。
家の耐震性とは
家の耐震性とは、地震発生時の揺れにどこまで耐えられるかの度合いのことです。
耐震性が高い家は強い地震でも倒壊、破損しにくく、耐震性が弱い家は強い地震に耐えられず倒壊、破損する危険性があります。
▼リノベーションでの地震対策について制震ダンパーの詳しい解説はこちら
築年数によって違う耐震基準とは?
耐震基準には、1981年6月以前の基準となっていた「旧耐震基準」と、1981年6月以降から現在にかけて使われている「新耐震基準」の2つの基準があります。(木造住宅の場合、2000年に耐震基準が強化されています―2000年基準)
新耐震基準で建てられた家は、大地震でも倒壊しないことが前提で、1995年の阪神淡路大震災でも新耐震基準の家はほとんど倒壊しませんでした。
お住まいの家の耐震性を知るには、1981年6月以降に建てられた家(木造住宅は2000年以降)かどうかが一つの目安となります。
地震に対する建物の強さを表す耐震等級とは
耐震等級は3段階に分けられています。
ランクが高いほど家の耐震性能が高くなります。
詳しく説明します。
耐震等級1(建築基準法の耐震性能を満たす水準)とは・・・
数百年に一度程度の地震(震度6強から7程度➡阪神・淡路大震災や2016年4月に発生した熊本地震クラスの揺れ)に対しても倒壊や崩壊しない、数十年に一度発生する地震(震度5程度)は住宅が損傷しない程度。
ということは、建築基準法ギリギリに設定されている「耐震等級1」の場合には、震度6~7程度の地震に対して損傷を受ける可能性がありますともいえます。
注目すべきは、震度6~7の地震で「倒壊・崩壊しない」の一文です。
これは「倒壊はしないが、一定の損傷を受けることは許容している」という意味でもあります。
倒壊や崩壊しなければ人命にはかかわる可能性は少ないので、基準自体は間違っているとは言いませんが、その後は補修しなければならなかったり、損傷の程度によっては建て替えが必要になる可能性があるということです。
耐震等級2とは・・・
耐震等級1の、1.25倍の地震に耐えられる性能・耐震強度の水準です。
震度6強~7の地震でも倒壊せずかつ、一部の補修程度で住み続けられるレベルということです。
「長期優良住宅」では、耐震等級2以上が認定の条件とされていますし、災害時の避難所として指定される学校などの公共施設は、耐震等級2以上の強度を持つことが必須になっています。
耐震等級3とは・・・
等級3は、耐震等級1の1.5倍の地震力に耐えられるだけの性能・耐震強度水準です。
住宅性能表示制度で定められた耐震性の中でも最も高いレベルであり、一度大きな地震を受けてもダメージが少ないため、地震後も住み続けることができ、大きな余震が来ても、その建物は耐えられるということです。
災害時の救護活動・災害復興の拠点となる消防署や警察署は、多くが耐震等級3で建設されています。
平成28年に起こった熊本地震では震度7の本震で耐えられた建物も、それ以上の揺れの余震で倒壊した住宅も多数ありましたが、耐震等級3の住宅は2度の震度7に耐えていたことが明らかになっています。
耐震等級1~3は任意なんです!
法律上は耐震等級1、すなわち建築基準法を守ればよく、耐震等級2、3はあくまで任意の基準です。
耐震等級1をクリアしていれば、地震で建物が損傷したとしても、施工側に法律上の責任はありません。
しかしながら、安心して暮らすことができる新築・戸建フルリノベーションをご提案するには、耐震等級3(耐震等級3相当)を目指すことがつくり手の責任と考えています。
耐震等級と表層地盤増幅率
表層地盤増幅率 (ひょうそうじばんぞうふくりつ)とは、 地表 面近くに堆積した地層 (表層地盤)の 地震時の揺れの大きさを数値化したもので、地震に対する地盤の弱さを示します。
いわば地震の力を割り増しする 係数 であり、数値が大きいほど地盤は弱く揺れは大きくなるのです。
地震の際の地盤の揺れの大きさは、震源の特性、地震波の伝播の特性とともに、土地の表層近くの浅い部分(表層地盤)の性質や堆積層厚とも関係しています。
つまり、地震波は地下深部の岩盤から、地表近くの比較的固い地層を伝って、さらに浅い表層地層を伝播し地表面に達するのですが、この際の表層地盤によって振動振幅が大きく増幅されるからです。
この表層地盤の増幅の度合いを数値化したものが表層地盤増幅率であり、地盤増幅率が大きいほど相対的に揺れ易いことになるのです。
新潟市の表層地盤増幅率
新潟市の表層地盤増幅率は、海岸付近や山間部を除いては1.8以上がほとんどです。
耐震設計を行った建物がちゃんと評価が出るのは表層地盤増幅率1.4以下からと言われています。
耐震等級3(建築基準法の1.5倍)を建てても表層地盤増幅率2.0地域では、建築基準法耐震評価1.0にしかならないのです。
ですので、建物の強さだけでなく地盤の強さも併せて考えていく必要があるということです。
耐震等級の知識を持つことは、自分が納得できる家づくりをする際に大切な要素です。
家族の命と財産を守るためには、耐震等級2・3の家づくりは必須で、さらに「制震」「免振」の構造も理解して、必要であれば合わせ技も大切になってきます。
耐震構造・制振構造・免震構造の違いとは
建物における地震への構造上の備えは、耐震構造だけではありません。
他にも「制振構造」「免震構造」があります。それぞれの違いは以下のとおりです。
「耐震」は、建物を強くする構造
耐震は、建物を強くすることで地震の揺れに耐えようとする構造です。
壁に筋かいを入れたり、部材の接合部を金具で補強したりして、建物を強くします。
地震が起こることで建物に作用する力「地震力」は、主に重量のある床や屋根にかかるため、これらを支える柱や梁なども含めて、建物全体をバランスよく補強することが大切です。
耐震はポピュラーな構造で、一戸建て住宅で最も多く採用されています。
耐震のメリット
① 建設コストが安い
制震や免震と比較して建設コストが安いことは、耐震のメリットです。
建物を建てるときは、建築基準法による耐震基準を満たす必要があるため、追加費用などがかかることなく、耐震の建物ができます。
ただし、建築基準法で定められているのは最低限の基準でしかありませんので、より地震に強い建物を建てたい場合は、コストをかけて補強することも検討するべきです。
➁ 工期が短い
工期が短いことも耐震のメリットのひとつです。
耐震は、最も多く採用されている構造なので、制震材や免震材を使った特殊な工事が必要ないため、工期はそれほど長くかかりません。
➂設計の自由度がある
耐震設計には大きな制約はありません。
ただし、補強のための筋交いや耐震壁などによって、開口の位置や大きさが制限されるケースもあるため、事前によく検討することが大切です。
耐震のデメリット
① 上の階ほど揺れが大きくなる
耐震の場合、地盤の揺れが直接的に建物に伝わるので、大きな揺れを感じることも多いでしょう。
1階よりも2階の揺れが大きくなるということです。
➁家具の転倒などによる事故が起こりやすい
家具の転倒や物の落下といった二次被害が起こりやすいことも、耐震のデメリットのひとつです。
建物の損傷がない場合でも、揺れが直接伝わるため家具が倒れて怪我をする可能性がありますので、家具を壁に固定しておくなどの対策をしておく必要があります。
➂繰り返しの揺れに弱い
建物は頑丈ですが、繰り返しの揺れで筋交いや接合部の金物が損傷してしまい、最悪の場合、倒壊してしまう可能性があります。
揺れが頻発したときや、大きな地震が発生した後は、適切な点検とメンテナンスが必要です。
「制震」は、ダンパーなどを使って振動を吸収する構造
制震(制振)は、建物内に制振ダンパーなどの制震材を組み込んで、地震の揺れを熱エネルギーに転換して空気中に放出することで、地震による揺れを小さくして、建物を倒壊しにくくする構造です。
制震のメリット
①コストが比較的安く揺れに強い
制震のメリットは、建設コストが免震と比べると安いことです。
繰り返しの揺れにも強いので、余震による建物の損傷も受けにくくなります。
耐震よりも地震による被害を抑えることができるということです。
➁メンテナンスが容易
メンテナンスが比較的簡単なことも、制震のメリットのひとつです。
地震が起きたあとも、ダンパーなど制震材の取り替えやメンテナンスは必要ありません。
ただ、ダンパーの種類によっては、装置の定期的な点検が必要なものもあるので確認しましょう。
➂ 地震以外の揺れにも強い
免震は、地震による揺れには発揮しますが、台風などの強風による揺れにはあまり効果がありません。
他にも、制震材には外を通るダンプカーなどの揺れにも効果を発揮します。
さまざまな揺れに対応したい場合は、制震を選ぶとよいでしょう。
制震のデメリット
①装置の設置場所や数が効果に影響する
制震材を設置する場所や数によっては効果に影響が出ます。
ダンパーなど制震材には効果を発揮できる位置があるため、建物の構造上、適切な数量を適切な位置へ設置することが必須です。
➁地盤の影響を受けやすい
制震は、地盤の影響を受けやすいという特徴があります。
制震は地震の揺れを吸収する仕組みですので、地表面に近い1階は地表面と同じくらい揺れが伝わります。
➂制震のコスト
免震ほどではありませんが、耐震よりはコストが上がります。(40〜100万円程度)
「免震」は、建物と地盤を切り離した構造
免震とは、耐震のように建物を柱や筋交いなどで固めるのではなく、建物の土台と地盤(地面)の間に免振装置を設置して、地震の揺れを建物に伝えにくくする構造です。
免震のメリット
①地震による揺れが小さい
建物と地盤が切り離されているため、地震が発生しても建物が大きく揺れることがないことが免震のメリットです。
➁ 建物内部の損傷を防止できる
揺れが小さいため、壁の内部や部材の接合部などの損傷を防ぐことができます。
免震のデメリット
①横揺れの地震以外には効果を発揮しにくい
免震は横揺れの地震には大きな効果を発揮しますが、縦揺れの地震には効果を発揮しません。
また地震以外の、台風などの強風には効果が少ないと言われています。
➁ コストが高い
免震は耐震や制震に比べ、免震材のコストが高くなります。(300~600万円)
また定期的な点検、メンテナンスや交換が必要となり、ランニングコストもかかります。
➂装置の設置場所や数が効果に影響する
制震の装置を設置する場所や数によって効果に影響が出ます。
制震の装置には効果を発揮できる位置があるため、効果を発揮するためには、建物の構造上、適切な位置への設置が必要です。
耐震・制震・免震の違いを知って選択しましょう
耐震・制震・免震には、それぞれメリットとデメリットがありますので、特徴や違いを理解し、どの地震対策が最適なのか、施工会社としっかりと打合せして選択しましょう。
前述したとおり、築年数によっても耐震性能に違いがありますので、今の家の耐震性能を把握して、必要であれば耐震改修をし、家族の命と財産を守り、安心して暮らすことがでくるようにしましょう。
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