環境意識の高まりや、DIY、レトロブームといった昨今の流行もあり、古民家などで使われていた「古材」の積極的な再利用が注目されています。
中でも「古民家移築」は、日本家屋の魅力を最大限に活かした再利用法として、取り扱う事業者も増えているようです。
そこで本記事では、古材の基本的な特徴や、家づくりに古材を使う利点などを解説します。
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「古材」とは
古材とは、文字通り「古い木材」を指します。もう少し具体的に説明すると、「築60年以上の家、昭和20年以前の”戦前”に建築された建物で使用されていた木材」というのが定義です。
リフォームやDIYがブームになっている昨今、古い材木を使った動画コンテンツなどが人気のため、なんとなく年数が経過したものを「古材」と称すると思いがちですが、使用されてから〇〇年以上と、明確に決まっていることに驚いた人もいるかもしれません。
インテリアに使われるような古い足場板なども古材と呼ばれますが、住宅業界の定義としては古材とは別物になります。
住宅においては、各時代で使われていた木材の質が関係してきます。特に戦前は、建物の建築資材として採用される木材の質が高いものばかりでした。強度や柔軟性といった建材として優れた機能を持ち、長期間クオリティを保ち続けてくれます。
戦後になると、復興等のため木材需要が急増。戦時中の乱伐による森林の荒廃や自然災害等の要因で、木材の量も質が下がっていたため、政府も「拡大造林政策(おもに広葉樹からなる天然林を伐採した跡地や野原などを針葉樹中心の人工林・育成林に置き換える政策)」といった手を打ちますが、一度失われた森林環境はそう簡単にはもとに戻らず、かつてのような質の高い建材は高級品となっていったという経緯があります。
空き家問題解決の一助に
質の高いとされる材木は、次の建築物の資材として再利用可能なほど、クオリティを保っています。築1400年以上経過する奈良の「法隆寺」に使用されている柱にカンナをかけると、新鮮なヒノキの香りがするといったエピソードも残っています。
そのため、昔の家づくりでは解体した家の木材は廃棄せずに、次の建築物の資材として再利用するというのが基本的な考え方だったとされています。近年の日本でも、建築資材に関してはリサイクル意識が高まってきており、環境省や国土交通省といった政府機関も、古材リユースに関する促進法の整備を進めています。
今日本では、少子高齢化などによる「空き家」が問題のひとつとなっていますが、新しいリサイクル資源・活用法として古材が注目されれば、空き家問題解決の一助になると期待されています。
古材を使った家の魅力
上記で紹介したように、古材は建材として非常に優れた特性を持っています。ここからは、そんな古材を使った家の魅力について見ていきましょう。
耐用年数(強度が高い)
ひとつ目は、「強度の高さ」です。戦後〜近年に採用されている建材は、強制乾燥させたものが多く存在します。短い時間で乾燥させたため、反りなどの狂いがなく、加工に適した状態です。反面、年数の経過とともに強度が落ちてしまいます。弾力性や木材の呼吸もないため、調湿効果も弱くなってしまっています。
古材は、時間をかけて自然に乾燥しているため、本来の強度を発揮します。一説には、樹齢100年で伐採されたヒノキは、100年後まで引っ張り強度・圧縮強度が増し、その後、約1000年以上かけてゆっくりと伐採時と同じ強度に戻るという驚異的な性質を持っているそうです。
間取りを広く取りやすい
家づくりに用いられる指標のひとつに「ヤング係数」というものがあります。別名「静弾性係数」とも呼ばれ、コンクリートなどの建材の強度を確かめる指標です。強度は素材の「たわみ」や「ゆがみ」といった変形を算定したり、測定したたわみから「応力(骨組みなどに外力が加わった時に、建築材の内部に生じる力)」を推定する場合に用いられます。
このヤング係数から見ても、古材は現代の木材にくらべ非常に高い強度をもっています。
ゆがみやたわみといった柔軟性に優れているため、柱の少ない「広い間取り」を確保しやすいといったメリットがあり、まさに古民家らしい広い空間を作ることができます。
経年変化による味わい
性能面だけでなく、長い年月によって生まれた味わい深い風合いも魅力でしょう。
新築用に切り出した建材は、キズや割れが気になってしまうものですが、古材ならそういった損傷も素材感を引き立てるアクセントに感じてしまうのが不思議なものです。少し黒ずんだ色味や風化したノコ目も、ヴィンテージ風デザインとして人気があります。
柱や梁、床材として使われていた古材を、次にどんなかたちで再利用するかは自由です。設計士や施主の自由な発想で活かしていきましょう。
雪国の古材は特に強い
「古材」が持つさまざまな魅力を紹介しましたが、最後に雪国の古材についても触れておきましょう。新潟県のような豪雪地帯の古民家は、雪の重みに耐えるため柱や梁も太く強度に優れています。そこから取り出される古材は、移築やリフォーム用の建材として価値が高く、魅力的です。
新潟県阿賀町の古民家
阿賀町は新潟県下越地方にある町で、東蒲原郡の津川町・鹿瀬町・上川村・三河村が合併し2005年に誕生しました。
かつては屋根に杉皮や板を葺いた家が立ち並んでいましたが、時代とともに多くの家がトタンに置き換わっていきました。
しかし豪雪地帯特有の勾配のついた屋根は当時のまま。今でも例年1m〜2mの雪が積もります。
前述の通り豪雪地帯の古材は太く長く強度も強いため、阿賀町には今では手に入らないような価値ある木材が多数残っています。
100年以上の風合いを取り入れるだけでなく、元となった古民家の思い出を受け継ぎ、日本全体で問題視されている空き家問題の解決にもつながる。
そんなところにも、古民家移築の意義があるのだと思います。
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