古民家移築ショールームは、阿賀町の築140年の古民家の古材を採取・鑑定・加工して使用しています。
新潟県東蒲原郡阿賀町日出谷に構えたこの邸宅は、約140年前に建てられ、代々生活が営まれてきました。
静謐を湛え、どっしりとした佇まいを感じさせる建坪約200坪の家。
真冬には囲炉裏の火を家族で囲むだんらんのひと時もあったといいます。
地松の立派な梁は、140年間囲炉裏の煤に燻されて黒光りしています。
このように太くて長い国産松の梁は、まず手に入れることが困難です。
大きな一枚板の漆塗りの建具は、今ではなかなか手にはいりません。
造ることができたとしても、とても高価なものになります。
平成4年、春とは名ばかりのまだ寒い日に解体が始まりました。
まず瓦を下し、外壁を外し、土壁を落とします。
その後、柱や梁などの構造躯体を残し、壁を取り払っていきます。
今ではなかなか手に入らないような、大きくて長い梁や柱を一本一本取り出していきます。
さすが長年の豪雪に耐えてきた越後古民家は立派な材料で建てられています。
家の中心を通っていた10m以上ある梁を丁寧に外し、クレーンで吊り上げて取り出します。
取り出した古材を作業場に運び込み、含水率・ヤング係数を測定し、古材の鑑定をします。
木は伐採して乾燥が進むなかで、200~300年かけて強度が上がり、その後1000年ほどかけて元の強度に戻っていくのです。
古材は、新材よりも頑丈な材料が多いのです。
設計図に合わせて古材を選定し、
昔から使われている墨つぼを用いて墨出しをし、材料の中心を探ります。
元々の木の形で曲がったままの梁などの構造材を熟練の大工が昔ながらの手刻みをします。
今は機械によるプレカットが主流ですが、曲がっている材料は機械で刻むことができません。
今や、ハンドプレカット(手刻み)できる職人は本当に少なくなりました。
平成4年7月4日、現場に材料が搬入され建て方の準備が整いました。
古民家から採取した古材と新しい材料を組み合わせていきます。
長さ7.5m直径36㎝の大きな丸柱も立ち上がり古材の梁と組み合わせます。
間近で見る古材の梁は、
140年前の大工の手仕事をうかがうことができます。
古材と新材を組み合わせて、個性的な空間ができました。